「黒と茶の幻想」


やっぱりずんずん読めちゃった。
読みやすくて面白い。
夜のピクニック」の大人版って感じ?
四人の男女が交代で語りながら
屋久島を4日間歩く。
ただ、それだけ。なのに面白いのはさすが恩田陸



しかも憂理が出てくるなんて。
麦・・・の物語と繋がっている?
また読み直さなくては。



しっかりものの利枝子で話が始まり
話好きな彰彦がそれに続き
謎めいている蒔生が話す。
そこまでは読みながら納得していた。
だから、物語の最後を節子がしめることに
初めは違和感がある。
一番常識があり一番人づきあいが上手で
だからこそキャラクターとしては地味であろう彼女が
最後に語る意味。
最後まで読むとなるほどな、と思う。
読んだ後、きちんと現実に着地できた気がした。


こんな風に、何のしがらみもなく
男女四人でつるんで旅ができたら
きっと楽しいんだろうな。
だけどそれをするには
若いころに種を撒いておかなくては実現しない。
高校時代に女子ばかりで遊んでいた私が撒いた種に
男子はいないな。


繰り返しみる夢の話。
昔の事件の話。
宗教についての話。
桜の木の話。デ・ジャ・ヴの話。
話しても話さなくてもよいような他愛のない話。
仕事の話じゃない話。打算のない話。時間がたっぷりあるときの話。


高校生のころにはこんな話ばかりしてたよね、っていう
懐かしい思いに満たされた。



私が一番好きなのはココ。

   けれど、ひょっとすると、少女たちの直感のほうが正しいのかもしれない。
   あたしたちは時を変え時間を変えて、何度も同じ人と巡りあっているのかもしれないのだ。
   水が循環していることを考えれば、新しいものが次々と生まれていくというより、
   生命も循環していると考えるほうがずっと自然なのではないか。
   その方がずっといい。その方が救われる。
   胸の奥でその言葉を噛みしめた。
   あたしはそう信じよう。今失おうとしているものも、いつかまた戻ってくるのだと。


今長男に読んで聞かせたら「それって江原さんがいつも言ってることだね。」だって。
そっか。